フランス新内公演紀行(3)

第3回 ワインの街ボルドー 新内に酔う

新内協会理事長・新内節人間国宝 鶴賀若狭掾

あまり変化のない田園風景の中、快適な車中でボルドーへ到着。
ホテルは駅の近くで便利は良いが、部屋も設備も従業員もパリと同じ程度のホテルでもう慣れた。ボルドー市には路面電車が市内を走っているので、移動にタクシーを使わずに便利である。
世界に名高いワインの街であるボルドーは、大西洋からガロンヌ川を100キロ程上流の河畔にある。高い建物は無く落ち着いた街でワインのシャトーが数百軒あるそうだ。
美味しいワインが飲みたくて来た訳でもないが、大いに期待はして来た。当然ながらその前に演奏公演が控えている。
市街地から車で20分程の場所にある会場は、どちらかと云えば若者向けの公開スタジオステージで、日本の古典芸能には向かないかなという感じであったが、それも面白い雰囲気であった。

ボルドー公演開演前

ここは日本大使館の紹介の公演で、書記官が同行してくれたのだが、実際には当地の総領事が動いての開催であった。がその総領事が日本の古典芸能に興味がないのか、知識と理解がないようであったのが少し問題かなと思われる。

ボルドー公演

終演後のカーテンコールの後に、質問が多くあるのはいずこも同じであった。
翌日は待望のワインのシャトー廻りのバスツアーに参加した。

シャトーを訪ねるツアーバスの中にて

2軒のシャトーに案内されて、長々と講釈を聞かされるが英語での説明であり、私には分からないので退屈した。白ワインのシャトーでは、貴腐ワインが美味しかったが、赤ワインのシャトーでは安ワインで旨くなかった。余り期待したほどではないツアーで、やはり5大シャトーに行きたかったなと皆の結論であった。
その夜は今回の総仕上げの最後の晩餐で、下見でも来たフランス料理店「ガブリエル」へ。ここの料理とワインは、満足して舌鼓を打った。これでボルドーへ来た甲斐があったと満足して一同疲れも取れた。
然しまだこれでは終わらないのがフランスの良いとこで、ボルドーからの帰路、ドゴール空港までは新幹線のTGVで行ったのが、これがまた大変な思いをした。
まったく日本では考えられない事で、列車の入ってくるホームが決まっていないのである。
全員がスーツケースと手荷物を抱えてホームの地下道で待機をしている。
列車は断りもなく遅れるし、進入して来る直前にホームが判ると、大急ぎで上がるが、今度は乗る車両がなかなか分からない。大きな荷物を持って右往左往して捜す。駅員も見つからないし、焦った事あせった事。若い連中でさえ汗だくで、このいい加減さに私は腹を立つし、血圧も上がったものだ。
まあ大方何処の国でもこの程度が当たり前で普通である、日本が几帳面で親切で優しく礼儀正しく清潔で神経質過ぎるのかな。
そして便利すぎるのかな…。そして食べる物も美味しすぎるのかも。ある程度いい加減な方が生き易いのかも。快適になり過ぎるとそれが当たり前になり、少しの不便さやいい加減さに対応出来なくなる体質になって、身体と心が軟弱な感覚構造になるのかも…と思った。でも大らかさも程度があるけどなあ…。
それにつけてもやはり日本は素晴らしい国だ。
何かと云うと世の不平不満ばかり口にする日本人がいるが、総合点を付ければ日本は世界の一番良い国で、そして素晴らしく優秀な国民である事間違いないと、私は大いに誇りを持つ。そう感じながら常に日本へ戻って来る。でもまた海外公演には行きたくなる。これも間違いない。

「邦楽の友」より
2015年5月号

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