新内横丁の調べから(15)

海外演奏旅行(6)アメリカ編 ② – アメリカ名門大学での公演

人間国宝鶴賀流十一代目家元 鶴賀若狭掾

アメリカツアー中の新内と八王子車人形の一行

私の海外公演は殆ど八王子車人形との共演であると、既に何度も紹介しているが、果たして車人形とは如何なる人形であるかを説明していなかったようなので、そこで簡単にこの人形の仕組みを説明しておきましょう。
車人形は約200年以前に埼玉県入間にて初代西川古柳が創案した。その後多く人達により改良を重ね、また文楽の人形遣いの指導を受けて今の形を整えて来た。
明治の初めに2代目西川古柳が八王子で継承し現在に至っている。
人形の大きさは文楽人形と同じだが、文楽との違いは一人遣いで、遣い手は箱型の「ろくろ」に腰を掛ける。そして両腕にて人形の頭と両腕を遣い、両足は自分の足の親指と人指し指で挟む。
ろくろ車は大変によく出来ていて、前後左右に自在に動く。約20 cm×17 cm四方に高さ25 ㎝の大きさの木の箱で、中に車が前に2輪と後ろに1輪入っている。それが車人形の由来である。車椅子ではない。
頭も衣裳も200年以上の歴史ある芸術品である。
一人遣いなので動きが軽快敏捷で小回りが利き、且つコンパクトで軽便なので旅公演には最適である。
平成27年9月6日に神楽坂劇場で上演するので是非ご鑑賞頂きたい。(無料)
海外公演は車人形座が5名、新内が4名程の構成で、道具も少なくし、大方10名程度で出掛けている。
アメリカ合衆国は5回この人数で約20都市を回った。

ダートマス大学での車人形ワークショップ

初の公演の時は大学8校を巡回した。ニューヨーク・ボストンを基点に、MIT、ダートマス大、プリンストン大、スミス大、ウィリアムズ大、マサチューセッツ州大他に行き公演した。
特にマサチューセッツのアマースト校には日本人の先生が在職しており2度訪問した。北大の「少年よ、大志を抱け」で有名なクラーク博士の母校である。
この大学は日本人の教師が多い事もあってか、生徒の日本文化の活動が盛んであり、我々の公演も大勢の生徒が集まり、反応も良く賑やかな喝采を受けた。英語新内が大きな成果を上げていると確信した。
大学の公演演目はやはり「弥次喜多」が主である。それと学生にワークショップを行う。車人形を持たせて人形の操り方を教え、車に腰かけて簡単な動きを指導する。
新内のワークショップでは浄瑠璃(語り)は無理なので、三味線と撥(ばち)を持たせて弾かせる。学生達は物珍しさと面白さとで興味律々で触っていた。そして教わってから後に我々の舞台を鑑賞すると、尚更感動するように感じた。

プリンストン大学教室で新内を語る

其々の大学では大方同じような反響で楽しい公演であった。ボストン市の世界的に有名な大学MITは、天才的頭脳の学生集団である為か、反応が今一なのは無理なしと思う。 然し理科も文科も、脳と心にバランス良く収めねばならぬぞとは、凡才のひがみか感性の違いか…などと悩みつプリンストン大学へ。
ここも全米屈指の名門校だ。ニューヨークのホテルに大学から迎えの車が来た。何と大型のリムジンである。さすがプリンストン大学と、嬉しいより驚いた。初めて乗った広い車内に新内組だけで行った。
此の大学は生徒ではなく教師達への講義と演奏で、日本人の先生が多く参加した。黒板に歌詞を書いて語るという授業形式で、有名校の先生達に講義する楽しみを味わった。新内宣伝の意義ある機会であったと感謝。その夜のディナーは最高であった。

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